システム開発者は、目標とするシステムの性能や消費電力を実現しながら、開発コストをより低く抑えるため、回路設計について試行錯誤を繰り返している。特に、システムが複雑化し、用いる技術が高度化してくると、それを実現するための設計手法は多様化し、その難易度は一気に高くなる。さらに、ビジネスの観点から見ると、開発の期間短縮とコストダウンに対する技術者へのプレッシャーは強まる一方である。
こうした課題に対して、最先端FPGAを有効に使いこなすこと、そのためにデバイスメーカーなどが準備している開発キットを活用することは、直面する問題を解決する方法の1つといえよう。

迅速なシステム開発を可能に

 システム開発において、競合製品との差異化を図るために、基本性能を高めつつ多くの機能を少ない消費電力で実現するために、最先端のシステムLSIを活用することは多い。ところが、半導体プロセス技術の進化とともに、より規模の大きなシステムを1デバイスに集積しやすくなった半面、システムLSIの回路設計や動作検証などに多大な労力が必要となり、開発のコストも膨大になってきた。デバイスの試作を繰り返し行うことになれば、新製品の出荷時期に遅れが生じたり開発コストがかさんだりして、市場での競争力にも多大な影響を与えることになる。

 こうしたシステム開発における環境の変化もあって、設計の柔軟性が高いFPGAが注目を集めている。特に、最先端の28nmプロセス技術を用いて量産されるFPGAでは、設計の柔軟性に加えて、高性能なマルチコア・プロセッサをハードウェアIPで実装しているSoC FPGAも用意されている。多様なニーズに対して、FPGA製品の選択肢がさらに広がったといえよう。

 半導体デバイスの進化が著しい中で、システム設計者は設計効率の改善も求められている。そのためには、設計資産を有効に活用していくことも必要だ。例えば、限られた社内の人的リソースで、これまで以上に開発成果を上げようとすれば、システムの差異化を図るための開発に集中することである。逆に規格化されたインタフェース部やデータ処理部など、システムの性能や機能を実現していく上で、大きな差異化要因とはならないような回路については、なるべく外部の設計資産を流用していく。そうすることで、システム全体の開発効率を改善していくことができる。FPGAベンダーが提供している開発キットを活用することも、開発効率を改善する一助となろう。

 ここでは、一例として28nm FPGAベースのシステムの迅速な開発を可能とする、アルテラの開発キットについて、その概要やバリエーションなどを前後編の2回に分けて紹介する。1回目は低消費電力、低コスト「Cyclone® V FPGA」と、ミッドレンジ・アプリケーションに求められる高性能と消費電力を最適なバランスで提供するミッドレンジ「Arria® V FPGA」のFPGAデバイスに対応した開発キットについて取り上げる。

開発のニーズに合わせて選択

 FPGAベンダーから提供される開発キットには、設計に用いるFPGAデバイスを実装したFPGAボードや、関連する周辺ハードウェアおよびケーブル類、多様なIPコアを利用できる開発ソフトウェア、リファレンス・デザイン、ドキュメントなどが含まれている。このため、ユーザーは開発キットを購入後からすぐに開発に着手できる。

 特に、アルテラはいち早く、28nm FPGA製品群の量産出荷を始めた。そして開発キットも用意するなど、28nm FPGAを使ったシステム製品をユーザーが迅速に開発し、市場に投入できる環境を提供している。既にアルテラから提供されている開発キットの製品一覧を図1に示す。

図1アルテラの28nm FPGA製品を網羅する開発キット一覧
図1アルテラの28nm FPGA製品を網羅する開発キット一覧

 開発キットの概要や特徴などを述べる前に、FPGAデバイス「Cyclone V FPGA」について簡単に触れておく。Cyclone V FPGAはCyclone IV GX FPGAに比べてトータルで最大40%低い消費電力を実現している。シリアル・トランシーバの消費電力も低く、5Gbpsトランシーバでチャネル当たりの消費電力は88mWである。

 Cyclone Vファミリには6種類の製品を用意している。ロジックのみの「Cyclone V E」、3.125Gbpsトランシーバを内蔵した「Cyclone V GX」、5Gbpsトランシーバを内蔵した「Cyclone V GT」、およびこれらの3製品に、それぞれ「デュアルコアARM® Cortex-A9 MPCore プロセッサ」をハードIPで実装した「Cyclone V SE SoC FPGA」、「Cyclone V SX SoC FPGA」、「Cyclone V ST SoC FPGA」がある。

低コストと消費電力を重視する設計に最適:Cyclone V GX FPGA開発キット

 ここからは、アルテラが提供している主な28nm FPGA向け開発キットについて、その概要や機能を簡単に紹介する。まず、低消費電力、低コスト設計向けに「Cyclone V GX FPGA開発キット」を用意した。この開発キットには、開発ボードや基本的な動作に必要なソフトウェア、開発ソフトウェア「Quartus II」などが含まれている。開発キットに含まれる開発ボードを図2に示す。

図2 Cyclone V GX FPGA開発ボード
図2 Cyclone V GX FPGA開発ボード

 今回、出荷を始めたCyclone V GX FPGA開発キットは、FPGAプロトタイピングやFPGA消費電力測定回路、転送レートが最大3.125GbpsのトランシーバI/Oの信号品質テストといった機能を備えている。さらに、PCI Expressリファレンス・デザインが含まれている。このため、PCI Express® ベースのシステム開発を大幅に短縮することが可能である。こうした機能を活用することで、産業用ネットワーク機器、ネットワークカメラ、監視カメラ、車載インフォテイメント・システムなどのシステムレベル設計を、より迅速に行うことができる。

ミッドレンジ:Arria V GX FPGAスタータ・キット/Arria V GX 開発キット

 アルテラのArria V FPGAはコスト、性能および消費電力のバランスを最適化したミッドレンジFPGA製品である。リモート無線ユニットや10G/40Gラインカード、放送スタジオ機器などの用途を視野に入れて開発された。現在、Arria V FPGAファミリとして、5種類の製品を展開している。6.5536Gbpsトランシーバを内蔵した「Arria V GX FPGA」、10.3125Gbpsトランシーバを内蔵した「Arria V GT FPGA」、これらの製品にそれぞれ「デュアルコアARM Cortex-A9 MPCoreプロセッサ」をハードIPで実装した「Arria V SX SoC FPGA」と「Arria V ST SoC FPGA」、そして10月に新たに発表された、12.5Gbps トランシーバ内蔵「Arria V GZ FPGA」である。いずれも消費電力が少ないというのが特徴の1つである。例えば、スタティック消費電力はロジック・エレメント数が500kで800mW以下であり、ミッドレンジFPGAとしては低い。また、シリアル・トランシーバの消費電力も、6.375Gbpsトランシーバでチャネル当たり最大100mWと小さい。

 Arria V FPGAの開発キットとしては低コストの「Arria V GX FPGAスタータ・キット」とフル機能の「Arria V GX 開発キット」が用意されている。さらに、Arria V GX FPGAをベースにした「Arria V GX FPGA RF開発キット」(英文)も提供している。図3に「Arria V GXスタータ開発ボード」を、図4に「Arria V GX FPGA開発ボード」を示す。

図3 5AGXB3ES FPGAデバイスを搭載したArria V GXスタータ開発ボード
図3 5AGXB3ES FPGAデバイスを搭載したArria V GXスタータ開発ボード
図4 5AGXB3ES FPGAデバイスを搭載したArria V GX FPGA開発ボード
図4 5AGXB3ES FPGAデバイスを搭載したArria V GX FPGA開発ボード

 Arria V GX FPGAスタータ・キットは、PCI ExpressのハードIPやハード・メモリ・コントローラなどが実装された開発ボードを用い、Arria V GX FPGAの機能を低コストで評価することができる。Arria V GX 開発キットは、さまざまな機能を備えたプロトタイピング・プラットフォームである。10G/40Gラインカードや高精細ビデオカメラなどに向けたFPGAを開発し、評価することができる。さらに、Arria V GXベースのRF開発キットを用いると、従来は数カ月を要していたRFシステムの設計から検証までの期間を、数週間に短縮することも可能となる。

すぐに入手可能な28nm FPGA向け開発キット

 開発キットには、FPGAのハードウェア/ソフトウェア開発に必要となる機能が含まれている。この開発キットを有効に使いこなすことは、設計の効率を高める手段の1つであることはこれまでも述べてきた。そのためにも、システム設計者にとって「使いやすい」ことや、使いたいFPGA製品に対応した開発キットが「必要なときに入手できる」ことが大切である。アルテラでは、こうした要望に応えて、最先端FPGAの開発キットをいち早くそろえ、FPGAユーザーに提供している。

この記事は、アイティメディア社『FPGA Insights』に掲載されていたコンテンツを、アイティメディア/EDN Japanの許可を得て転載しています。

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